
最近では、「幼稚園無償化」や「学校給食の無償化」といった子育て支援に関連するニュースを頻繁に目にするようになってきました。
これらの施策は、子育て世代にとって非常に助かるものであり、生活の質を向上させる要素となっています。
しかし、これらの取り組みが実際に期待される効果を上げるためには、根本的な問題に目を向ける必要があります。
それは、現在の日本における子どもの数の減少という深刻な現状です。
例えば、2019年には日本の年間出生数が90万人を下回るという驚くべき事態が報じられ、非常に多くの人々に衝撃を与えました。
この数字は、政府の予測よりも2年も早く達成されたものであり、人口減少がさらに鮮明になってきているのです。
このような優れた子育て支援を実際に利用するためには、まず何よりも子どもの数を増やす必要があると、誰もが感じているのではないでしょうか。
この問題に真剣に取り組んでいるのが、大阪市です。
「子供が欲しくても授からない男女をしっかりと支援していきたい」と語るのは、大阪市の松井一郎市長です。
松井市長は、不妊治療が健康保険の適用外であり、高額な医療費が大きな障壁となっている現状を踏まえ、
2021年度からは所得制限を設けずに独自に支援する制度の創設を検討していることを、2月27日に発表しました。
6組に1組が不妊に悩む時代?

国の調査によると、子どもがいない夫婦のうち、実に6組に1組が不妊に悩んでいることが明らかになっています。
一般的には、結婚を考える年齢に達したカップルが避妊をせずに普通の夫婦生活を送っていれば、
妊娠する確率は、結婚から半年で約7割、1年で9割、2年でほぼ100%に達すると言われています。
しかし実際には、不妊症に悩む人々が多く存在し、努力を重ねても妊娠に至らないケースが少なくありません。
不妊症とは、何らかの原因で子どもを授かれない状況を指し、夫側に原因があることも決して珍しくはありません。
一般的には、避妊を行わずに1年以上妊娠しない場合、不妊症と診断されることが多いです。
最近では晩婚化が進んでおり、私の周囲でも30代前半まで仕事に集中し、30代半ばで結婚する人が増加しています。
かつては結婚したらすぐに妊娠すると考えられていましたが、今は妊活に取り組んでいる人も多く見受けられます。
成功が約束されない高額な治療

多くの夫婦が不妊の問題に直面しているにもかかわらず、治療を始められない理由の一つは、高額な治療費です。
体外受精や顕微授精といった一般的な不妊治療は、健康保険の適用外であるため、治療にかかる費用が非常に高額になってしまいます。
さらに、これらの治療は100%の成功が保証されているわけではなく、1回の採卵で妊娠することができれば良いのですが、
5回、6回と繰り返すことになると、数百万円単位のコストが発生するのが現実です。
国からの助成制度は存在するものの、夫婦の所得合計が730万円未満であること、さらに助成回数にも制限があります。
また、1回につき15万円から30万円の助成が受けられたとしても、回数や所得に制限があるため、
助成の範囲内で妊娠できた夫婦には恩恵がありますが、
妊娠できなかった夫婦にとっては、最終的に高額な負担がのしかかることになります。
終わりのない不妊治療ではなく、前向きな治療へ

不妊治療は、費用面だけでなく、精神的および肉体的にも非常に大きな決断を要するプロセスです。
もちろん、夫婦はお互いに協力し合わなければ成功には繋がりません。
私の周囲でも、何度も病院を訪れ、希望を持っては残念な結果が続くというケースが多く見られます。
最後の挑戦として何年もかかり、ついに待望の子どもを授かったという喜びの声も耳にしますが、
現在も、前向きに治療を続けている知人や友人が多く存在します。
しかし、残念ながら、喜びを味わうことなく治療を断念せざるを得ない夫婦も多く存在しているのが現実です。
そうした意味でも、大阪市の今回の取り組みは、不妊治療を金銭的な理由で諦める人々にとって、
大きな救済となることは間違いないでしょう。
少しでも多くの子どもが誕生するために、全国でこのような施策が迅速に進められることを期待しています。